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「片倉。ここいい?」

ビール片手に寺田尚樹は、私の返事を待たずに右隣の席に腰を下ろした。

「嫌って言っても座るんでしょう?寺田くんは。」

「あは。さすが片倉 俺のことよくわかってんね。さすが毎日一緒にいるだけの事はあるよな。うん。」

調子よく寺田が笑うので私も調子を合わせてみようかと思ったけど、最近の忙しさで引きかけた風邪をおして飲んだアルコールがそうはさせてくれない。

「仕事でしょ。仕事。」

そう言って ビール瓶を手にとって向かいにいる主任にお酌をした。具合悪い顔を見せるとうだうだとうるさいので、とびきりの愛想笑いをして。

「片倉、俺にも。」

寺田はまだ3口ほど残っていたビールを飲み干し、グラスを私に差し出した。
寺田は同期で、まあ顔は悪くない。ただ私の嫌いなお調子者で、自信家で、事あるたびに、私に絡んでくる。面白がられてるのか、気に入られてるのか、真意は定かではない。


呑み会はほどなく解散して、2次会にいく人たちに別れを告げて、歩く私の横になぜか寺田がぴったりとくっついてる。

「ねえ。ちょっと。なんでついてくるの?」

立ち止まって、ちょっと迷惑そうに寺田に言うと、寺田はキョトンとした顔をして言った。

「なんでって。んー。一人で帰れるのかよ?」

「なにそれ。私子供じゃないわよ。」

「具合よくないんだろ?」

今度は私がキョトンとしてしまった。きちんと勧められるままにビールも飲んで、料理も食べて、どこにも具合悪い要素を感じさせるものはないように繕ったというのに。

「やっぱりな。だろうと思ったんだよ。お前な、そういうことで無理してどうすんだよ。これも仕事のうちの飲みだとか思ってんだろうけどさ」

言いながら、寺田は自動販売機でほっとレモンを買って私に差し出した。

「・・・ありがとう。」

普段は寺田だけに限らず、人に甘えたり、弱みを見せずに過ごしてる私にとって、なんだかちょっと調子狂うやりとりに、ちょっと居心地の悪さを感じた。
 


通りに出てタクシーを拾い乗りこむと、寺田も乗り込んできた。

「もぉ。なに?」

「途中まで乗せろよ。方向一緒なんだし。」

「え?優しさかと思えば、タクシー代浮かそうってことなの?病人の私に。」

何を考えてるのかさっぱりわからずに叩き落とそうかと思ったけど、無常にもタクシーは動き出し、体力的にも限界が近いのか、寺田を下ろす元気もなく、仕方なしにあきらめた。
窓の外に目をやり、前方の数々の車のテールランプたちを見ながら私は小さくため息をついた。
突然左手をぎゅっと寺田が握りしめてきた。

「ちょっと、やめてよ。」

体をこわばらせて、そう言うと、寺田は握る力を強めてきた。

「なあ。お前、右手にも左手にも指輪してないんだな。付き合ってる奴いないの?」

「それって握る前に聞くもんじゃないの?それに、付き合ってても指輪もらってなかったらしてないわけじゃん」

「ああ。それもそうだな。で、どうなんだよ」

冗談で聞いてるのか、本気で聞いてるのかわからなくて、でも、どうして寺田が今こうして聞いているのかうすうすと気付いてきた私は、どう返事をしていいのか即答できないでいた。

「・・・付き合ってる人はいない。」

「好きな奴は?」

「・・・・・いるような、いないような・・・。」

正直なところ、自分でもわからない。この1年ただがむしゃらに、何も考えなくてすむように仕事も残業ばかりして、ただ会社と家の往復の毎日を過ごしてきた。仕事が忙しかったのも本当だけど、それは往人を忘れるためにそうした節もあるからだ。

「ふぅん。そっか。じゃあ俺は完全に望みを捨てずにいれるんだな。断わられたわけじゃないもんな。今の。」

そういうと今までの真剣な顔とは打って変わっていつもの寺田のくったくのない、だけど強気な笑顔に戻っていた。

「すいません。あそこのコンビニで止めてください」

寺田は手を離して、内ポケットから1万円札を取り出すと、

「じゃあな。早く寝ろよ。」

と言ってタクシーから降りていった。私は、ほっとしたけど、なんだか胸が苦しくなった。手を握られて思ったのは「違う」という事だった。私が求めてる手のぬくもりや強さがこの手ではないことに。往人の手を思い出していた。ただやさしくふんわりと私の手を握る往人の手を、どうして私は手放してしまったんだろう。
鞄から携帯を取り出し、電話帳を開く。今でも消せない「彼氏」のカテゴリには「往人」の名前が今でも表示されている。この1年、何度もこのメモリを表示させては、涙を流した。ただ出来ないのは通話ボタンを押すことと、メモリを消去することだ。

声がききたい。せつない夜は声がききたい。

忘れようとしても、忘れようとすればするほど、自分の気持ちに押しつぶされそうになって苦しくなる。誰に好かれてもうれしくない。ただ悲しいだけ。

私は窓の外にまた目をやった。テールランプたちがぼんやりとにじんできて、頬にすぅと涙がつたった。運転手に気付かれたら気まずいと思ったけど、酔っているせいか、涙は止まらなかった。

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登場人物紹介
☆片倉 麻里(かたくら まり)会社員/23歳(5月16日生)
☆橘 征人(たちばな ゆきひと)会社員/22歳(12月23日生)
☆寺田 尚樹(てらだ なおき)会社員/23歳(8月9日生)


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えっと、、、便乗してみました。12月のネタみたいですが・・・・てへてへ。
皆さん文才豊かですね♪
おはずかしい。。。

とりあえず 続けばいいなーという 願いを込めて・・・。駄作ですみません。
そして「ベタ」な仕上がりになっちゃいました。
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by czblue | 2006-02-01 19:50 | novel